肯定的な意図を聴いて、伝え返す。

この度は、NLPフィールドのブログにようこそお越しくださいました。
今年は、オンライン講座「NLP共感リスニング」を開催しています。

タイトルの「肯定的な意図を聴いて、伝え返す」は今回と次回のテーマとなります。

前回の「感情」と今回のテーマの関連性について



「感情」は、どうして生じるのでしょうか?

 それは、「感情」の背後にある、その人の礎(いしづえ)となるものに触れるからです。

 例えば、「寂しい」という気持ちは、「つながり」を必要としていたのかもしれません。
「怒り」という気持ちは、「尊厳」が大切だったりすることを教えてくれているのかもしれません。
(状況やその人の特性によって異なります)

 また、ディズニー映画の「インサイトヘッド」をご覧になった方は、「よろこび」と「かなしみ」を中心に、それぞれの感情キャラクターが、その背後にある大切な想いに触れていたことを思い出せるかもしれませんね。

 私たちは「感情」が生じると、この「感情」に意識を奪われ、反応的な行動を起こしたり、「感情」をコントロールしようとします。

 しかし、「感情」に気づき、受け入れる体験できると、「感情」の源にある、大切なことに触れることができるようになります。この「大切なこと」(肯定的な意図)がわかれば、「感情」的な反応を超えた、心身ともに一致した感覚から行動を選択できるようになります。

「肯定的な意図を聴く」力は、今の時代に大変求められています。

 最近読んだ本に、次のような記述がありました。(下線は筆者)

相手の「肯定的意図」に注意を向けて、きく。

これは、本書に収録された諸論文に共通する姿勢と言える。

それは、相手は何らかの肯定的な意図をもった前提に立って、発言の意図や背景文脈を理解しようとする姿勢だ。

仮に相手の発言がこちらへの反論であったり、理解不能な内容だったりしても、だ。

人なら、誰しも、自分に良かれと思って行動している。

自分も、相手も相容れないあの人もその点では同じ、という前提に立って聴く。

「マインドフル・リスニング」とは、相手の肯定的意図を信じていくことに他ならない。

ー「マインドフル・リスニング」(ハーバード・ビジネスレビュー編集部訳、ダイアモンド社)

 下線部が、肯定的な意図の一側面を表現しています。

 このように、「肯定的な意図」を前提に聴いていくことは、人との違いを認めていくことにあります。
 そして、同時に「違い」の中にある「同じこと」を聴く方法でもあります。
 何がお互いに響き合うかにチューニングしていると、いつしか自然と共感が起こってきます。

「肯定的な意図」を聴ける関係性ができると、

  • 組織や職場で重要視されている「心理的安全性」が高まる
  • 人間関係で思いやりが深まり、相手とのつながりを体験できる
  • Well-Beingの向上が図れます−自分自身の対話の中では葛藤が減り、自己受容や自己一致感が生まれたり、本音に気づいたり、新たな行動の選択肢を発見する

 など、たくさんのメリットがあります。

「肯定的な意図」とは、具体的にはどんなものがあるの?

これまでにたくさんの方と接していると、「肯定的な意図」にもいくつかのレベルがあることに気がつきます。

代表的なものを出してみると

  1. 副次的な効果(二次的利得ということもあります。)
  2. 意味づけやビリーフ(前提)
  3. 価値
  4. 願望や目的
  5. ニーズ

です。 

 これらはいずれも言語化しづらいものです。なぜなら、気づきがなかったり、感覚レベルであったり、身体知や情動などの情報も含むからです。愛している人に愛を表現するときに、「言葉」が見つからなくてもどかしくなるような感じに例えられます。

 そのため、上記の5つのカテゴリーも便宜的に分けてみると、ということで理解してください。また、これは「価値」なのか「ニーズ」なのか、などの区別は、今の時点ではあまり重要でないことも付記しておきます。


 ただ、一例は出しておきますのでご参考になれば幸いです。

 例えば、「部下に言わなければいけないことを先延ばししている」ということがあれば、 先延ばしをしていることにある背後のあるものとして、

1.副次的な効果:行動ベース 
  自分の仕事に集中できる。部下との人間関係が保てる。

2.意味づけやビリーフ
 「私は指導が苦手だ。」「(自分も)人からとやかく言われるのが嫌だ」
  →  「仕事にこれ以上負荷をかけるべきではない」

3.価値
  安心感、気楽さ、(職場での)調和

4.願望や目的
  伝えるタイミングが欲しい。自分らしくありたい。

5.ニーズ
  心の平安、大事にされること

のようなものになります。

 価値、願望、ニーズはとても似ています。価値や願望は、とても「個人的」のもので、「価値」は現状、「願望」は未来に意識が向いています。ニーズは、人種、性別などを超えて、人が生きるために必要としているものです。そのため、ニーズをお互いに体験できると、感情を超えた真の共感が得られやすくなります。

 一度、肯定的な意図が発見できても、さらに深い肯定的な意図があります。それを丁寧に追っていくことで、その人自身の生きる中核(コア)のレベル[いのちのニーズ]まで到達することもあります。

どんな行動の背後にも「肯定的な意図」がある


 NLP(神経言語プログラミング)では、人と関わるときに、いくつか前提や視点を持っていると効果的であることを教えてくれます。

 こちらの「どんな行動の背後にも『肯定的な意図』がある」もその一つです。

 例えば、「会社で創意工夫してくれ、と言われるけど、実際にアイデアを提出したら、『まだまだだね』と無碍にされた。もう2度とアイデアを出すものかと思いました。」という話を聴いたとします。

 このときに、「発言の内容」とその人の「意図」を区別して聴くことが求められます。そして、この意図を聴き取るためには、相手の話の背景にまで意識を広げ、自分の身体で感じる感覚なども総動員します。(聴く方が、頭で解釈するのではなく、心身を一致させることが必要です。)
 

 そして、問題となる相手の振る舞いや行動、そして、自分の意見に焦点を当てるよりも、どんなことを満たそうとしていたり、相手の反応から心の奥で何を必要としていたのか、ということに話し手の「焦点」をシフトしていきます。

 先ほどの例では、「貢献」や「成長」を大切にしていることや、「自分の本来の価値を承認して欲しい」「大事にされること」などが推測できます。ここを起点にして、会話を展開していくと、その人の「本音」、「当事者意識」や内発的な動機を発揮していくことが多くなります。

 こちらは他者との関係でご紹介しましたが、自己内の会話を通しても行うことができます。そして、それぞれに素晴らしいメリットをもたらします。

 1)自分自身について

「頭」と「心」と「身体」の情報が拡大し、自己を受容したり、自己一致感が生まれたり、新しい選択肢や行動を生み出すことができます。

 例えば、

  • ダイエットしたい、と思ってもついつい食べてしまう。
  • 早く寝なきゃ、と思ってもスマホを見てしまう。
  • あのミスを上司に伝えねば、と思いつつ、先延ばしにしてしまう。
  • 早く独立したい、とずっと考えているが、行動に移せない。

など、頭では「こうしなければ」と思っていても、心や身体が「こうしたい」と違う方向に向かってしまうことがあります。
 こんなとき、(内省ではなく)反省して罪悪感に囚われたり、自分を責めたり、自尊心を傷つけたりしていませんか?


 この場合、「頭」が主体となっているため、行動の背後にある「心」や「身体」は私たちの一部であるにも関わらず「頭」から分離され「コントロールできない対象」となって困っています。

 このときに、リフレクション(内省)して「心」や「身体」の背後にある動機付けている意図を言語化できれば、「頭」は、それを理解することができます。これによって、(少し難しい表現になるかもしれませんが)「頭」と「心身」で分割されていたシステムが、これによって橋渡しされて、相互に理解を深めていったり、一つのシステムとして機能し始めるのです。

 例えるなら、バスの運転手が早く着くことを目的にして行き先、周りの景色やハンドルばかりに意識を向けていたところを、一旦停車して、乗客の状態を確認し、要望を聴いて、スピードを調整したり、乗り心地を優先して再出発するような感じです。(可能なら、乗客と一緒に歌を歌いながら運転していきます。)

 2)人間関係について

 真の意味での「共感」が得られます。

 昔の話になりますが、友人何名かと食事に行ったときです。

 和食であったかいお味噌汁がでているのに、全てを食べ終わってから、冷めたお味噌汁を飲む方がいました。(友人A)

 同席していたもう一人の友人Bが「温かいものは温かいうちに食べればいいのに」と非難めいた口調で言うと「水分は消化の助けを妨げるので、最後にしている」とその友人Aは返答しました。

 すると、友人Bは行動の背景や意図が理解できたので、「なるほど」と納得し、また楽しげな会話に戻っていきました。

 もしお互いの意図を尋ねたり理解しないでいるなら、相手の行動を自分の価値観や常識で解釈してしまい、お互いに誤解が生まれたり、嫌な思いをしたり、信頼が損なわれたりすることがあります。
 しかし、お互いの発言や行動ではなく、その背後にある意図が通じ合うと、相互理解が高まります。


 今回は、頭で理解するレベルの肯定的な意図でしたが、さきほどご紹介したように、肯定的な意図にもいくつかのレベルがあります。肯定的な意図を通して会話が積み重なることによって、NLPではラポールという関係性の質が深まり、昨今の組織やチーム運営において重要な「心理的安全性」を高めることにも役立てることができます。

肯定的な意図をどうやって発見すれば良いのだろう?

「肯定的な意図」を発見する力は、丁寧にリフレクション(内省)すれば、誰でもできるようになります。
 そのためには、「バスを一旦停める」必要があります。そうすれば、外向きの忙しい心が落ち着き、言語を超えた「心」や「身体」などの暗黙知や身体知に触れる力が目覚めます。

「肯定的な意図」を発見する一番良い方法は、誰かに話を聞いて質問してもらったり、推測してもらうことです。
 聴き手が鏡のようになって、相手の話から「肯定的な意図」にフォーカスを当てると、話し手も集中することができます。人は注意を向けた先から情報を手に入れるからです。
 

 「肯定的な意図」が発見されて受け入れると、「頭」だけから、自分の全体性へと意識やエネルギーが拡大します。その結果、自尊心や自信の度合いが高まります。

 他者のとの関係においては「違い」の中に(人として)「同じ」ことを発見できることで、自己が拡張し、仲間としての意識が芽生えます。
 また、話し手が自分では気づかなかったニーズを発見できたとき、聴き手の中でもそのニーズが目覚めていることに気づけるでしょう。

 具体的な方法は、ぜひワークショップで体験してみてください。

 

最後に・・・

 一連の「NLP共感リスニング」で一番お伝えしたいことが、今回と次回の内容になります。

 私たちは、日常的には何かの役割を担い、社会、職場や家庭の目に見えないルールを受け入れています。その際に、一人の人間として「あること」をどうしても背後にして置いてきてしまいます。
 特に、過去、人事の仕事をしていて、そのことを痛感しました。

 昨今は「働き方革命」と称して、生活を犠牲にすることなく仕事ができるように制度や環境が整えられてきています。それでも仕事は、人生でも多くの時間を占めます。そこで出会う人たちとの交流、やりとりは人生そのものの質に大きく影響してきます。仕事の時間こそ、生きる喜びを感じ、人として成長できる場(フィールド)になって欲しいと願っています。

 聴くことを通して、その人の存在を丸ごと認め、共感することで社会的な役割を超えた一人の人間として通じ合うことの美しさや素晴らしさを体験してもらいたい。そんな想いもあります。 


 付け加えて、私は、自分が病気になって、周りの人間関係や状況ばかりに意識を向けて自分の心や身体の健康に気を配っていませんでした。
 地球環境の大切さが叫ばれていますが、地球の一部である自らのうちに宿る自然、いのちも大切にケアして欲しいという想いも持っています。

 自分の中にある瑞々しい、イキイキとした(aliveness)生命力を取り戻し、この世界に表現していくこと。

 私が病気になって得られたかけがえのない学びであり、出会った方と共にシェアし、実践したいことでもあります。(まだまだ、私もパーフェクトではありませんが)

 もしよろしければ、オンラインで今回と次回、お時間をともにできればこれ以上の喜びはありません。

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この記事を書いた人

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nlpfield

株式会社NLPフィールドです。
人生におけるNext Stageにむけて、NLPを中心としたコーチング・アプローチで支援をしています。ご自身の人生を心豊かに生きることを基点として、周囲の人々に共感し、社会に貢献できるよう研修やコーチングを提供しています。
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