私たちの認識は見る、聴く、触る、匂う、味わうことを通した情報です。これが外の世界や自分の内面を作っていきます。
この五感の質(クオリティ)が私たちの体験、考え、衝動などの印象を形成します。
それではこの質(クオリティ)がどのように生まれてくるかというと、
例えば見る(視覚)であれば、
明るさ( ⇄ 暗さ)
大きさ( ⇄ 小ささ)
色がある( ⇄ 白黒)
動きがある(速い ⇄ 遅い)
距離(近い ⇄ 遠い)
焦点(明確 ⇄ ぼんやり)
などの細かな要素と、( )中に示されているコントラストの状態です。
この五感の質に影響を与えているこの「細かな要素」や「コントラストの状態」のことを「サブモダリティ」と呼んでいます。
上記は、見る(視覚)の例ですが、それぞれの五感に付属しています。
聴く(聴覚)であれば、
音量(大 ⇄ 小)
テンポ(速い ⇄ 遅い)
距離(近い ⇄ 遠い)
位置(右側 ⇄ 左側) など
触る(触覚)であれば
圧力(強 ⇄ 弱)
温度(熱 ⇄ 冷)
範囲(広い ⇄ 狭い)
重さ(重い ⇄ 軽い) など
■私たちは「違い」をサブモダリティで体験している
例えば、砂糖と塩の違いは見た目わかりにくいところがあります。
まず味わえば、その「違い」に気づきます。
それ以外にも手で触ってみる粒子の荒さを感じ分けることでも気づけます。
しかし、こうした「砂糖」や「塩」などの言葉のラベルをはがすと、私たちが違いに気づけるのはこのサブモダリティの感覚の質が違うからです。
私たちは、そのものが私たちに影響を与えていると受け取りますが実際はこのサブモダリティのレベルで影響を受けています。
さらに、同じ「砂糖」と「黒砂糖」で甘味が違うものもあります。
これは、サブモダリティの要素が同じであっても、例えば舌への刺激(強 ⇄ 弱)という割合の変化によって気づくことになります。
つまり、私たちの認識の違いはサブモダリティによる構成要素とその割合によって測っていることになります。
同じものが「好き」や「嫌い」になることや頭の中で描かれていることの違いや「イメージ」なのか「事実」なのか「記憶」なのかもまたこのサブモダリティの構成要素と割合によって、私たちは判断しているのです。
そうすると、同じ対象についてサブモダリティに変化が起こったら面白いことができるように思いませんか? 例えば、嫌いな人が、その人は何も変わっていないのに好きな人のサブモダリティで体験できるとどんな変化が起こすのだろうか? という好奇心溢れることです。
■NLPは、このサブモダリティを調整する実践的方法
このサブモダリティは、脳内で自動的に生成されます。
それが私たちの、認識、思考、感情、行動の土台になり私たちの意識に上がってきます。
NLPが生み出す変化は、この繊細な感覚レベルに気づきをもたらして、意識的にサブモダリティの構成要素や割合を変えていくことで体験を変えていくことなのです。
例えば、嫌な記憶を中和したり、自分の感情を高めていくことなどです。そのため、トラウマなどの強烈な記憶に対してもNLPは活用することができますし、創造的な世界を現実化するための方法まで幅広く対応することが可能なのです。
■サブモダリティに気づく力は、メタ認知力を高めることになる。
私たちは、ときに「怒り」や「焦り」などの感情の飲み込まれてしまい自分を制御できないときがあります。
そんなときに今の自分のこうした感情がどんなサブモダリティで構成されているのかに気づくためには、その視点から離れてより客観的に眺めるところに意識を置く必要があります。
この今の視点から離れてより俯瞰した位置で物事を捉えることを「メタ認知」力と呼びます。
また感情が生じているプロセスに対してきめ細やかなラベルを貼ることは、それがいい悪いという次元を超えてただ、あるがままに物事を受け取っていく行為にもなります。
これは昨今の変化の激しい状況の中で生き抜くために必要な力とされています。でも、本当に激しいのはその状況における自分の思考や感情の波に捕まってしまうことです。そのため、自分の思考や心のメタ認知力を育てる力がこれからより必要とされてくるでしょう。
■私たちの認識は現実ではなくサブモダリティの集合体
NLPでは、私たちの認識は「地図」であり実際の「土地」ではないという前提をお伝えしました。
私たちの地図は五感体験が土台になっているということ。
そして、より細かく言えばサブモダリティが土台になっているということです。
ここで大事なことは、どんな地図も限られたサブモダリティで表現されているので常に可能性という広大な領域のほんの一面を反映しているにすぎないということです。
言い換えると私たちが限界や問題ということは、その状況やタイミングのサブモダリティの要素で解釈されたものです。
つまり、これは出来事そのものを変化させなくてもサブモダリティを変化させることで、解釈も変わりうる可能性を示唆しています。
■しかし、人はサブモダリティより「事象」を変えようとする。
例えば、上司に怒られたとしましょう。
その時に、「もうお前は何をやってもだめだな。」と言われたとします。
この体験がずっと残っていて、仕事をやるたびに自分の足を引っ張り、本来の自分の力を発揮できない人にサブモダリティで変化をサポートします。
そのときに、その記憶を変化させるために対照できる記憶を一つだします。
例えば、大好きな人に
「お前がいてくれて、本当に安心するよ。」
という体験を使うことにしましょう。
ここで初心者の方は、上司の人の話す内容を
「もうお前は何をやってもだめだな。」→「お前がいてくれて、本当に安心するよ。」
に変えてしまうのです。
これは、言葉の内容(事象)を変えてしまっています。つまり、「何」を言ったかを変えているのです。
こうしたサブモダリティの変容もあるのですが、本来行ないたいのは、その言葉の内容を「どのように」言ったかを変えたいのです。
そのためには、大好きな人が言ってくれた
「お前がいてくれて、本当に安心するよ。」
という声の高さ、スピード、テンポやリズム、どの位置から聞こえるかなど、「何を言ったか」ではなく、「どのように言ったか」に着目することです。(言葉にまつわる以外にも、表情などの視覚要素や身体に伝わってくる体感覚の要素が重要なこともあるのでそこも丁寧に気づいていきます。)
■サブモダリティの対照比較
例えば、
「もうお前は何をやってもだめだな。」が強いスタッカート調で、高い音だとしましょう。
また、こちらは突き刺すような感じで声が届いてきます。・・・(1)
そして
「お前がいてくれて、本当に安心するよ」が穏やかな調子で、低い音にしましょう。
こちらは包むような感じで声が届いてきます。
このように、それぞれの体験のサブモダリティの違いを比較することを「対照比較」といいます。
「もうお前は何をやってもだめだな。」というのを穏やかな調子にして、低い音にします。そして、包むような感じで声が届くようにしてみます。
そのときに、はじめの(1)の印象とどんな風に変わるかを確認します。効果的に行うためには多少の技術と練習が必要ですが、うまくいけば多くのことが解消していきます。
■サブモダリティを扱う上で知っておいたほうが良いこと
1)サブモダリティの機能的な特徴
サブモダリティの変化は二元的ではなくて、連続的です。例えば、白から黒に色を変えたいとき、いきなり、白を黒にオセロのように変えるのは、二元的になります。
サブモダリティの変え方は、どちらかというと白から徐々に灰色のグラデーションがかかって黒に変わっていくというような連続的な変化をさせていきます。
ただ、どうしても連続性にならない変化もあります。
例えば、自分の目で見ている映像と自分が客観的に写っている映像にスイッチするときのような場合です。
これをアソシエイト(実体験)とデソシエイト(分離体験)と呼びます。
2)サブモダリティには、心地よさと心地悪さの「境目」がある。
例えば、苦いコーヒーに甘さを加えると飲みやすくなります。だからといって、砂糖をどんどん加えると甘すぎて飲みづらくなります。部屋の光も暗すぎれば、何もできませんが明るすぎても目がチカチカして、何もできません。
それぞれに程よさの境目があります。
変化の一方を極端にすればよい、ということではありません。
3)サブモダリティの変化には「相乗効果」が期待できます。
例えば、大好きな人の顔を思い出したときにその映像を大きくしたら、明るさが増してきたり、その映像を近くにしたら、温かさが伝わってきたり、相手の声が大きく聴こえてくることがあります。
このように同じ視覚の要素での相乗効果や違う感覚の要素での相乗効果があります。
相乗効果が高いものは、一般的に変化の度合いも大きいとされています。変化させたいときは相乗効果の高いサブモダリティを探ることが良くあります。
4)サブモダリティのパターンには、それぞれ意味がある。
例えば、同じ体験をした人でも後日、その記憶を思い出すとある人は鮮明に覚えているのに、別の人はぼんやりとしか覚えていないことがあります。
このように、私たちは同じ体験をしていても全く同じサブモダリティで記憶しているわけではありません。
そして、そこにはそれぞれの人の体験の意味があるわけです。そのため、これから誰かにサブモダリティを変化させるときにくれぐれも注意して欲しいことは、
相手に変えても良いか、同意を必ず取ることです。
■サブモダリティを変化させるときのポイント
1.サブモダリティの要素を変化させる
(1)どの要素も変化は可能です。
例えば、視覚「暗さ→明るさ」や体感覚「温かさ→涼しさ」などサブモダリティの項目はどの要素も変化させることができます。
(2)場面の一部分だけを変化させる。
全部を変化させる必要はありません。
例えば、部屋の景色を思い出したら全てがカラーであれば椅子以外は白黒にすることなどもできます。
2.サブモダリティの内容を変化させる
(1)要素を削除することもできます。
あ)視覚、聴覚、体感覚などのモダリティそのものを削除する。
例えば、不快な音はシャットアウトする、など
例えば、この部屋の椅子だけ削除する、など
(2)要素を追加することもできます。
例えば、落ち込んでいる場面を想像したら、そこにロッキーのテーマ曲をかける、など
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