感情を聴いて、伝え返すことの大切さについて

 この度は、NLPフィールドのHPにお越しくださりありがとうございます。

 1月から、おおよそ月1回程度、「NLP共感リスニング」というタイトルでワークショップを開催しています。

 これまでは、自分の中での対話のループを外に出す(他者に聴いてもらう)ことや他者に介在してもらうことで、いつもと違う思考パターンを生み出すことを支援してもらいました。

■1回目(2022年1月15日開催)


 相手の思考の流れやそこから生まれるストーリーを聴くことを実践しました。
 聴くときにできうる限り自分の解釈や意見、感情などで、相手の流れを逸脱したり、中断しないようにせずに、相手の話を理解していきます。

 ときに、話し手は経験したことがないことや悩みを持つと、自分自身に語りかける内容が混乱していたり、批判的なだったり、小さくまとまってしまったりしていることがあります。話を聴いてもらうことで頭を整理したり、理解してもらえるだけでも、心は落ち着きを取り戻せます。

 さらに、事態を客観的に把握し、自分の話を再解釈できることができると、これまでにない気づきが得られることもあります。

■2回目(2022年2月5日開催)


 コミュニケーションの「ループ」(循環性)に着目すると、「聴く」という行為は、話し手に言語的にも非言語的に必ず影響を与えています。ループの背後には「関係性」があります。


 話してと聴き手は、これまでの人生経験も異なるため、同じ出来事でも違った見方や考え方をしています。

 丁寧な関係性が作られれば、聴き手は、話し手とは異なるものの見方や考え方に気づきます。そして、それが役立つ情報になることがあります。

 また、話し手のことを純粋に理解したいという前提から質問すると、話し手にとって気づきの機会になることもあります。


 こうして話し手の頭の中で繰り広げられているストーリーや思考、内的な会話などのループに変化が生じます。

 2回目のテーマとなる「リソースを聴いて、伝え返す」ことは、聴き手が1回目の話を理解し寄り添うだけでは、どうしてもネガティブなループを強化してしまうことに気づいたときに、選択肢や調整弁として役立ちます。

そして、次回の3月5日(土)は、
第3回目の「感情を伝え返す」というテーマで開催します。


 相手の話から「感情」に焦点を当てるメリットはいくつもありますが、今回は次の3つをご紹介します。

  1. 話し手の意識の焦点を思考やストーリーから外せる
  2. 感情に注意を向けることによって、自己認識力が高まる
  3. 感情の背後にあるものにアプローチしやすくなる

話し手の意識の焦点を思考や
ストーリーから外せる

 脳は注意を向けた先の情報を処理します。

「感情を聴いて伝え返す」ということは、「思考」と「思考」でぐるぐるしていたループから「思考」と「感情」のループに移行させていきます。


「思考」を中心にしている場合、時間軸と因果関係から記憶が紡がれてストーリーとなり、そこに注意が向かっていきます。

 代表的なものとしては、「過去」の記憶をもとに「未来」の予測をすることで因果関係をつくる場合と「未来」の予測から「過去」の記憶で整合性を取ろうとする場合があります。

 例えば、前者は昨日ケンカしたから、今日から顔も見たくない、とか、後者は、明日プレゼンがあるけど、この前、失敗したから嫌だな、などです。

 こうしたときに、問題を避けようと具体的な対策について思考を重ねるため、自分がそのことについて抱いている感情にはあまり注意を向けません。


 この場合、聴き手が言語や非言語から「感情」を受け取り、質問したり、自分が感じた感情を投げかけてみると、その人は、自分の「感情」に注意を向けます。また、その処理をするときには、思考と異なる回路が動きます。

 感情は記憶と身体とつながっています。身体は「いま、ここ」に存在しています。「過去」や「未来」の記憶を脇に置いて、純粋に身体が体験しているものに注意を向けていくと、「過去」や「未来」の因果で形成された頭の中の思考の流れは中断していきます。


 「感情には、独自の知性がある」とも言われています。感情の知性を取り入れることは、この後にご紹介する「自己認識」にも大きく影響していきます。

「感情と脳機能について」

 脳の理解を深めるととき、よく説明される方法として、「ポール・マクリーンの脳の三層構造説」が使われます。厳密なモデルではありませんが、脳の構造や理解を深めるためによく利用されます。

 ポール・マクリーンによると人間の脳は「爬虫類脳→旧哺乳類脳→新哺乳類脳」の順番で進化したと言われています。この三層は機能に大きな差があり、進化の過程で複雑になっていきました。

爬虫類脳

 進化の過程で最も古い年代に発生しています。自律神経システムの中枢である脳幹と大脳基底核が中心となります。

 生命脳とも言われ、呼吸、心拍や血圧、体温などを自然に調節する機能を持っています。

旧哺乳類脳

 大脳辺縁系から成立っています。

 感情脳とも言われ、感情と司る扁桃体、記憶と司る海馬、大脳辺縁系の各部位を結ぶ帯状回(たいじょうかい)などがあります。
 心地よい感覚や不快な感覚などを生み出す情動や感情の元となっていて、危険や脅威があると防衛本能から反応します。

新哺乳類脳

 大脳新皮質から成立っています。

 とくに前頭前野という部位が中心となります。この部分は、高度な知性や知能の源泉にもなっています。
 言語脳や社会脳とも言われ、言語はもちろんのこと、空間把握や相手の立場に立つことや、創造的な思考や抽象度の高い思考も可能となりました。


 ただし、現在ではこの部位が中心にはなるが単独では機能しておらず、大脳辺縁系や脳幹などと連携、協調した精神機能を司っていると言われています。

感情に注意を向けることによって、自己認識力が高まる

実際には頭で自分の体験の全領域を横切る線や境界をい引いているのである。
その境界の内側にあるものはすべて『自分』と感じたり、呼んだりしているものである。
一方、その境界の外側にあるものは全部、あなたが『非自己』と感じているものである。
言い換えると、自分のアイデンティティはすべて、その境界をどこに設けるかにかかっていることになる。

「無境界」 ケン・ウィルバー著 

 私たちは、社会や他者からの要求や評価に応えるため、日々思考をフル回転させ、そこで得られた情報をまとめ、同一化する(identify)ことで社会性を備えた自己を定義しています。

 特に、社会人になり事実、客観性、冷静でロジカルな思考を求められると、感情、身体感覚や直観などの主観的な情報は排除しなければなりません。


 個人的な話をすると、私もNLPではを学び始める前は、完全に感情を麻痺させていましたし、身体の痛みなどは我慢したり、気づかないこともありました。また、批判的な声には敵のように戦っていました。


 しかし、身体や感情に生じていることは紛れものない自分自身の真実です。

 これを排除したり、抑制するとストレスや不安の増加の要因になります。言語以前の感情や身体感覚を受け入れ、つながることによって、その人の自己の境界内での気づきの領域が広がり、情報量が増し、リソースや選択肢も拡大します。

 一般的にいう、自己の器が広がっていきます。


 自己認識力が高まるメリットは、

 ・外側の環境の変化による注意の変動が自己の内面で調整することが可能となること

 ・自己の器が広がることで、状況への適応力や他者の受容力が高まること

などが挙げられます。

 また、「思考–感情–身体(行動)」のつながり(システム)を俯瞰する力が養われ、NLPでバランスを保つ調整方法を身につければ、「非自己」として扱われた感情や身体感覚が自己の境界へと受容され、前向きになれたり、心身の回復が早まったり、自分を大切にする土台になったりします。

 話し手の感情を受け取りやすくなるためには、聴き手は心をオープンにして感情に共鳴するようにする必要があります。 

 さらに感情は言語になる前の生命プロセスです。そのため、感情のボキャブラリーを増やすことができれば、感情に丁寧に、繊細につながることができます。これは、この後の「感情の背後にあるものにアプローチ」するときに影響していきます。

大脳辺縁系と前頭前野の関係について

 感情は大脳辺縁系、とくに「扁桃体」が主に機能しています。

 最近の研究では、感情に飲み込まれてしまったり、一度囚われてしまった感情が持続的な人は、前頭前野(新哺乳類脳)から扁桃体に送られる信号が少ないと言われています。感情を落ち着かせたり、回復の早い人は逆に前頭前野(特に左側)が強く活動し、扁桃体とつながりが強くなっていると言われています。

 このつながりを強める方法が、言語化や瞑想などで距離をおいて眺める(向き合う)ことなどがあります。逆に、他者との共感を深めたり、自分をありのまま受け入れたいときは、前頭前野と扁桃体のつながりを弱めることが有効となります。

 よく感情や感覚に繊細な人、思考が得意な人(逆にいうと感情がよくわからない人など)は、このつながりを強めたり、弱めたりするトレーニングをすれば、感情のマネジメントに役立てられます。

感情の背後にあるものにアプローチしやすくなる

 「感情」は、生理的な感情評価的な感情に大まかに分けられます。  

生理的な感情は、文字通り、命に関わるようなものに相対したときに生まれるものです。

ある環境に入ったり、他者と出会うことで、自律神経系がバランスをとり始め、呼吸、心拍数や血圧が変化するなどの生理的な変化が引き起こされます。また、さまざまな神経伝達物質から感情を生み出します。

例えば、お腹が空いたときに目の前に美味しい食事が出るときの喜びや、社会的な孤立してしまったときにストレスホルモンが増えることで怒りがでたり、逆に悲しくなったりします。

評価的な感情は、これまでの自分の生きてきた経験の中で培った価値観や信念に触れたときです。

例えば、約束を破られたときに、約束は守るものだということを信条としていたり、信頼を大切にしている人は、何かしらの感情が生じます。
またそれによってネガティブな思考を続けると、感情を増幅させることになります。

 感情はその人に生命や、生きる上で大切にしている基盤に影響が出ている合図になります。しかし、こうしたことは普段は気づいていません。

 感情を聴くことは、この感情を生み出している源(ソース)とつながる糸口になります。

 私たちには、大人になるにつれて「あれはしてはだめ」「こう感じてはいけない」など小さな枠組みのなかに意識を押し込んでいきます。

「感情」を聴いてもらい、健全な状態(Well-being)を取り戻すことは、固定した枠組みの一歩外にでて、未知の内面の小さな宇宙への旅を始めることになります。

 それでは、どうすれば相手の感情を聴き、伝え返せるのか?
 2時間半という短い時間ではありますが、トレーニングできるようにしていきます。

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感情や脳機能に関する参考文献はこちらです。
「心を整えればシンプルに生きられる」(リチャード デイビッドソン著 三笠書房刊)

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nlpfield

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